中小企業の発展のために
100名ほどの小企業で約20年間、工場管理(品質管理・生産管理)をしてきた私が、個人で発明に取り組みながら会社を設立したのはなぜか。
「自社(小企業)の技術力の低下を食い止めて、今後も発展させるために、個人で支える」
中小企業は製造現場であるはずなのに、技術力は年々低下しています。
現状では、中小企業から新しいアイデアは生まれにくいと感じていました。
→ 将来に向けた問題意識はあるが、現状はとても忙しく、開発部門も知財部門もない。
→ 現場を良くしたいという気持ちと好奇心を持って、開発や変革を行う個人が少ない。
それなら、自分でやろう。
→ 会社の理解と承認を得た後、個人で特許を取得。
→ 特許を置いておくための会社設立(副業)。
→ 装置をつくってくれる企業を探そう。(ライセンス、又は譲渡)
そして
→ 発明の楽しさを伝えていこう。
基にある考え方
「アイデアは個人の脳から生まれる。組織はそれを実装する。」
(以下、私が多くの中小企業の技術力低下問題について考えた事です。長いので興味のある方だけ読んでください。)
オープンイノベーションに関する動画を視聴している中で「中小企業の技術力が日本の産業競争力を下支えしてきた。が、大企業による知財の搾取があるような…」とおっしゃっていました。昭和の時代にはそうだったかもしれないけど…
私は「小企業にそんな技術があるのかな? 大企業による知財の搾取というより、中小企業内部の問題で知財が生まれない現状なのに。」と感じました。大企業のせいにしないで、大企業と協力して中小企業が強くならなければならない。
下請け小企業は注文をくれる大企業のおかげで安定しています。これはとてもありがたいことで、大企業が知財を活かして強くなることも良い事です。
現実的に中小下請けは技術やノウハウを完全にクローズには出来ません。大企業は下請けの製造した物に責任があるのですから当たり前です。だから我々小企業が生き残るためには、新しく生み出し続けていかなければならないし、戦略的に自社を守っていかなければならない。
私は小さな工場が好きです。目の前に現場があって日々疲れている人や困っている人が見えて声が聞こえる。この環境が小企業の強みです。目の前の人達を楽にするため、ミスを減らすため、安全のため、それを考えるだけでアイデアは生まれると思うのです。
ですが現実として多くの中小企業でアイデアが生まれていない。なぜだろう。
(原因1:現場側の問題)現場はむずかしい方が有利
現場の改善意欲が低く、現場管理者が変化を求めていない場合が見受けられます。現場管理者にとっては「経営陣が知らない、わからない現場」が難しいものであるほど、「俺がいないと現場は回らないだろう?」と、自分の価値が高まるからです。あえて費用がかかる開発を経営陣に提案して面倒を抱え、現場を簡単なものにして自分たちの立場を弱めることは、現場管理者にとって何のメリットもありません。彼らにとっては、現場は難しい方が良いのかもしれない。
(原因2:経営側の問題)技術的な事がわからない
かつては日本の中小企業の経営者には技術屋が多く、経営陣には現場と技術を知っている方が多くいらっしゃいましたが、現在の中小企業経営者は現場経験がなく現場と距離のある方々が多いと感じています。中小企業の経営陣は、現場の技術的アイデアを理解したうえで支援するべきですが、それが出来ていないのかもしれない。
上記のような問題があると、新しい道具や方法を生み出して会社を良くしようと考える人は熱意を失ってしまいます。新しいアイデアは持っているのに口に出さない。問題に気が付いているのに行動しない。それでは会社は良くなりません。経営側が、現場と合わない開発部を作っても、開発の人員を補強しても、”やらされ感”では、新しいモノは生まれないと思います。面白がりながら難しい課題に取り組む個人を育てることで、会社を発展させることは出来ないだろうか。
結論
・現状では、中小企業から新しいアイデアは生まれにくい。と思う。
解決策
・中小企業の技術力の低下を食い止めるためには、経営陣に技術的な知識を持つ人が要る。
・中小企業経営者が変革に取り組む個人を守り育てて、活用する必要がある。
と、中小企業全体の問題について色々考えてみましたが、今の自分に何が出来るかな…と考えて
まずは自分が好奇心で開発に取り組み、知財を持とう。→ 萩原製作所の設立
それから、装置を作ってくれる企業、事業化してくれる企業を探して、特許をライセンス又は譲渡しよう。
そして、これからの人達に発明の楽しさを伝えていこう。
以上です。
現場がある小企業には、監査や見学に関係する企業の方々が来社され、一緒に現場を回り、現場で質問されたことには答えます。もし私たちが特許などでノウハウや技術を守っていなかったら、作り方や自作の装置をコピーされても何も文句は言えません。
ですが、特許を取るのには人もお金もかかり小企業にとっては大きな負担で、そこにリソースを割くことは困難です。冒頭の”大企業による知財の搾取”と言われている事は、やむを得ない上述のような中小企業の問題によって生じていると感じています。
社内で生まれたアイデア(特許)は会社のものだとしても、小企業では経営陣が技術を知らず「そんなアイデアは昭和の時代から知られているよ…。余計な事を考えずに手を動かせ。私たちは興味がない。」では、現場からは何も生まれません。
私は幸いにも「やりたきゃ自力でやれ。」と言っていただいたので、眠るのも忘れて自宅で特許出願書類を書いて、いくつかの特許を取得する事ができました。私の趣味が公開特許情報の閲覧だったことと、図面が描けたのも幸いでした。マイナンバーカード(電子証明書)とクレジットカードがあれば、特許は出願から取得まで全て自宅で出来ます。今は自分が取得した特許の周辺に、すこし形を変えた複製が出てくることを防ぐための出願をばらまいています。ここからの課題は知財の活用です。
私は自社を守るために特許を取りましたが、同時に「小企業や個人が特許なんて持っていても、役に立たない」と考えています。たくさんの方々に活用したいと思って頂けるような技術を生み出し、実際に多くの方に使って頂けるように今後も努めて参ります。
萩原製作所に関心を持って、長い文を読んでいただいてありがとうございました。
いつか皆様のお役に立てれば幸いです。
2021年1月 萩原 康史